剣の王国まとめ

comicoで連載中の漫画「剣の王国」のまとめです。作品振り返りにどうぞ。

剣の王国 第89篇「陰翳地下空間的七つ屋」まとめ

 一行は石造りのアーケードに入る。
「どこに向かってるの?」とドロテーア。
「飯か⁉︎ 飯か⁉︎」とパンチネロ。
「いや違う」
 アルフレドは、木造扉の前で足を止めた。
「質屋だ」
 看板には「老羊屋ろうひつじや」と書かれている。アルフレドがリング状の黒い取っ手を引くと、扉はギギギと音を立てた。そして彼らの前には、下へと続く階段が現れる。
「地下か」
 アルフレドは階段を降り始めた。
「あの……アルフレド、質屋に何か売るの?」
「いいからついて来い」
 アルフレドはフードを脱いだ。
「あっパンチさんはだめよ、売ったら」
「ちげーよ、てか需要ないだろ」
「何だとテメー」
 一行はギシギシと降りて行く。とても長い螺旋階段だ。壁には一つ一つ商品がディスプレイされている。ふとドロテーアが足を止め、先を歩くアルフレドもそれに気付き、足を止めた。
 彼女が「ん?」と反応を示したもの。それは蓋の閉じられた小さな箱だ。宝石箱のようにも見えなくもない。
「パンチさんこれ何かな」
 話を振られたパンチネロも知らない様子。すると突然、彼女の背後から手が伸びてくる。
「SPELLだな」
 アルフレドが蓋を開けた。ドロテーアは、突然の接近に少し驚いている。
 彼が開けた箱には、丸い色とりどりの宝石が、所々に埋め込まれている。彼の指が触れるとポーンと音が鳴った。すると一斉に宝石が光を放ち、ポロロンと音を奏で始める。
「オルゴールだ」とドロテーアの顔が華やぐ。
 街の喧騒から隔離されたような地下空間に、繊細なメロディーが反響する。
「商品だと思うから壊すなよ」
 少し賑やかになった階段を、アルフレドはまた降り始めた。
 階段を降り切ると、上部に太陽と月を模したステンドグラスが埋め込まれたガラスの扉が見えてくる。
「ごめんくださーい」
 一行は店を見渡した。色とりどりの、あらゆる商品。質屋と言えばそうなのだけど、なんだか雑貨屋といった感じだ。
「なんか、すごいね……」とドロテーア。
「誰もいねーのか」とパンチネロ。
 アルフレドは無言でベルを鳴らした。チリンチリーン。
 彫刻、書物、食器、瓶類、陶器のつぼ
「ほえー、これ全部売り物なのかな」
 皆、綺麗に磨かれ、光沢を放つ。
「高そう」とドロテーア。
「触るなよ」とパンチネロ。
「あ、ハイ、承知です」
 ドロテーアが「気をつけよう……」と言いながら棚を後にすると、商品の中から、何やら黒い生きものたちが顔を覗かせる。
「?」
 視線に気付いた彼女が振り返ると、彼らはパタンと姿を隠した。
「何かいた……」
 首をかしげる。ふとパンチネロが何かに気付く。
「おドジ、上見てみろ」
 頭上には、いくつもの瓶が天井から吊るされている。それぞれ個性的な見た目で、デザイン性も高い。
「わあ、素敵」
 蓋が閉められ、ラベルが貼られている。空き瓶ではなさそうだ。

 TO BE CONTINUED...

補足

陰翳(いんえい)=①光の当たらない暗い部分。②色、音、感情の変化があって趣が深いこと。
両方の意味が込められた演出でした。ふと音楽が空気を変える瞬間ってありますよね。
七つ屋=質屋を示す俗語・隠語。