剣の王国まとめ

comicoで連載中の漫画「剣の王国」のまとめです。作品振り返りにどうぞ。

剣の王国「第66篇 泥偶人形と少女と追憶の燈(丙)」まとめ

 私の瞳は、彼女を「ターゲット」として捉えました。
 ターゲット……。
 私は彼女を、殺すということです。
 私に気付いた彼女は、必死に訴えてきます。
 〝た〟〝す〟〝け〟〝て〟
 そう伝えてきます。
 血塗られた刀を持った私に。
 私は彼女の首を掴み上げ、刀を突き立てました。
 やがて彼女は苦しみ涙を浮かべます。
 私は、
 私の刀を腕に突き刺しました。
 私の腕は、血が流れません。何度自分の腕を突き刺そうとも、彼女は「ターゲット」のままです。彼女は「ターゲット」のままなのです。彼女は「ターゲット」のままなのです。
 ふと彼女は私の腕を掴みました。
 私の刀が止まります。
 彼女は私に、止めるように言いました。
 そして──

 それは、藤の花が香る季節で、私と彼女は庭の白いベンチに座っていました。彼女は嬉しそうに私にウェディングドレスのカタログを見せてきて、どれにしようかと悩みます。しかしふと、彼女の瞳から涙がこぼれ落ちました。そして自分の涙に戸惑い、ゴシゴシと拭います。
 何度拭おうとも溢れてくる涙を、私は自分の方へ引き寄せ、抱きしめていました。

 私は彼女を抱きしめていました。
 私の左腕は、彼女を強く抱きしめ、私の右腕は、彼女の体を突き刺していました。
 私は、
 彼女に幸せになって欲しかった。
 ただ、それだけだったはずです。
 彼女の苦しそうな呻きが聞こえてきました。崩れ落ちそうになった彼女は、私の服にしがみつきます。そして彼女は瞳を閉じて、気持ちを伝えようとしてきました。
 その息遣いが近付いた時、とうとう彼女は崩れ落ちてしまいました。受け止めた体は、決して「生き返らない」。
 私は彼女の血で染まった自分の手を眺め、ただただ叫び声をあげていました。

 ちょうど、女王陛下が剣を抜いた頃、橙色の花が咲き始めていました。そしてこれは、その花がしおれた頃のお話です。
 皆さんには、もう一つの世界があるようですね。
 そこに行くと、かつて死に別れた人と逢えるといいます。
 私は人間を模して造られていますが、人形です。
 あなたの元へ、旅立つ手立てがありません。

 《泥偶人形と少女と追憶の燈 完》