剣の王国まとめ

comicoで連載中の漫画「剣の王国」のまとめです。作品振り返りにどうぞ。

剣の王国「第42篇 ひとりで一人前」まとめ

 樹齢何千年はあるであろう大木に、丸い穴が三つ、そしてドアが一つ。
 木のふもとには井戸が掘られており、その反対側には棚が一つ。
 どうやらこの木の中には人が住んでいるらしい。
 中では木の階段を元気に駆け下りる音が……。
「トトー!」
 丸い窓辺には、スヤスヤと寝息を立てる黒いパグが。
 そ〜っと持ち上げ……。
「おーきーろ!」
「‼︎」
 パグを持ち上げたのは黒髪の少年。瞳は青く、子供らしい無邪気な表情を見せる。
 何やら小脇に図鑑のような本を抱えて、更に犬を抱えてよたよたと移動する。
 この二つを抱えてスマートに歩くには、彼の体はまだ小さい。
「ああ……アルフレドか。全くお前は元気で困るぜよ」
 トトと呼ばれた黒い犬がため息をつく。
「見て見てヤバそうな本見つけた」
 アルフレドはトトを抱えてベッドに座り込み、お構い無しといった感じでページをめくる。
「なんだエロ本でも拾ったか?」
「エロホン? なにそれ楽しい?」
 足を使ってきようにブーツを脱ぐ。
「知らんんがか? お子様め……ってこりゃあ大魔道事典グラングリモワールやか、大昔の禁書ぜよ」
 見慣れない文字がびっしりと書いてある。
「また書斎しょさいに忍び込んだのか。バレたらジルコニアに殺されるぜよ」
 トトはアルフレドと本の間に入って視界をさえぎる。
 ベッドにゴロンとうつ伏せになったアルフレドは、しかめっ面になる。
「だってジル、俺に全然SPELL教えてくんないんだもん。だから自分で勉強するしかねーじゃん」
 ふと、少年のテンションが上がる。
「これとか強そう! 『最大きんき……? のSPELL、ねく……まんし?」
「こらアルフレド、遊びで読むもがやない」
 トトは焦ってごろんと本の上に寝そべり、お腹を見せる。
「魔女文字だぞ、お前じゃ正しく読めんぜよ」
「楽勝だっつーの! トトもジルも俺のこと子供扱いして」
 ムキになるアルフレド
 冷や汗をかくトト。
 後ろで殺気を放つジルコニア
「こんなのすぐ覚えて、ジルコニアくそばばあをぎゃふんと言わせてやる……あ」
 振り返る、ゆえに生まれる危機的状況。
「だーれがクソババアだ、アルフレド
 パキポキと指を鳴らす。
 ……そっち? と疑問を持つトト。
 アルフレドは、石のように固まる。
「ごめんなさい」
 絞り出された謝罪ののち、鉄拳制裁の音が響いた。
 ゴッ。
 アルフレドは緑のリュックを背負い、森の中をとぼとぼ歩く。
 頭にはたんこぶを作り、顔はムスーっとして。
「だから言わんこっちゃない」
 トトは彼の足元をとことこ付いてくる。彼も同行するようだ。
ジルコニアは俺にSPELLを教える気なんてないんだ」
 ちぇっと舌打ち。
「弟子とか言ってこき使ってるだけだし」
 思えば家に、黒くてカササ……と動く虫が出た時なんかは──
「コワーイ♡ 倒してヒーローおねがーい♡」
「……」
 仕方なくホウキで格闘したのだった。
「早く取引上手うまくなってSPELL手に入れて、さっさと一人前になって出てってやる」
 ぷんすか歩く。
「取引が上手くなったからといって一人前になれるわけじゃないぜよ」
「は? なんで」
 驚いた表情で両手を握り、バッとトトの目線までしゃがみ込む。
「世界には取引じゃ手に入らんものが沢山あるぜよ、アルフレド

 勇気、忍耐、理不尽と弱い自分に負けない心、打算なしに信じ合える仲間、真実の愛。
 それらを一つも知らんままでは到底一人前になれん

「そんなもの……」
 アルフレドはショックを受け、瞳が動揺する。
「あっ」
 アルフレドが何かに反応する。
 下の方からガサガサ……と音がする。
 彼はトトを持ち上げた。
「おっと、何じゃアルフレド?」
「もーいーかーい」
 下の方でアルフレドと同じくらいの子供たちが「かくれんぼ」をしている様子。
 鬼役の子は腕で目を隠し、二人の子供が茂みに隠れている。
「まーだだよ」「まーだだよ」
 アルフレドはトトを抱きしめるように抱えて木陰に身を隠す。
「もーいーかーい」
 かくれんぼに参加したわけではない。
「もーいーよー」
 アルフレドはじっ……と彼らの遊びを観察する。
「隠れて見んでも一緒に遊べばいいがやき」
 図星を突かれハッとする。
「今度の村では友達つくるんじゃなかったがか?」
 下の方では、さっきよりも子供が増え、ボールを抱えて一本指を掲げている子のところへ皆集まって行く。
「いい、あいつらジルコニアの悪口言うから嫌いだ」
 トン、トンと木の幹から降りる。
「誰かと一緒じゃないと喧嘩もできない弱い奴ばかり」
 トトを抱きかかえて走り去る。
「ひとりで何でもできるようになるから仲間とかも要らない」
 トトをぎゅっと抱きしめる。
「ひとりで一人前になるからいい」
 トトは少し困ったように答えた。
「そうか」
 アルフレドが出かけている間に、木の家には誰かが訪ねてきた。
 トントン。
「はーい」
 洗い物をしていたジルコニアは、ゴム手袋を外す。
 ──変装しなくちゃ
 エプロンを外し、もじゃもじゃのカツラと、鼻付きビン底メガネを装着して玄関を開ける。
 問おう。お前やる気あるのか。
 その銀髪もグラマラスなボディもまるで隠せていない。
 それどころか、相手はその浮かれた格好を見てどう思うだろうか。
わしじゃジルコニア
 スルーとな。
 杖をつき、顔に深くシワを刻み込んだ銀髪の老人。
「少し話をしたいんだがいいかね」

 TO BE CONTINUED...

「剣の王国」作品ページ

(コメント欄を読んで)トトの犬種ってパグなのか……。シレッと直しておこう。
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