剣の王国まとめ

comicoで連載中の漫画「剣の王国」のまとめです。作品振り返りにどうぞ。

剣の王国「第20篇 蘇るアトラント」まとめ

 沈みゆく大旦那。
 島の地盤が崩れ、岩の塊となって海へと沈む。
 ドロテーアとパンチネロの元にも岩が迫ってきて、二人はギュッと目を瞑る。
 そこへ、鎧に包まれた手が差し伸べられる。二人を受け止めたのは──上半身を鎧で包んだ人魚……。
 二人は目を丸くする。
 そこへ、巨大な竜とともに崩れ欠けた島が落ちてくる。
 よく見ると、剥がれ落ちた地盤の下から、家や建物が姿を現わす。──都市だ。あのリンゴの楽園の下には都市が眠っていたのだ。
 ドロテーアは圧倒される。
 あの螺鈿らでん珊瑚さんごの宮殿──まるで海の中だと感じたあの空間。そう言う事だったのか。
 ドロテーアを助けた人魚の他にも、三又の槍を持った戦士、髪の長い美しい人魚。幾千もの人魚たちが、姿を現した都市の中心へめがけて泳いだ。

 一方海上では。
「あのねっ、鶏を助けようとしてドロテーアが海に飛び込んで……」
 それを聞いたアルフレドは、すぐさま見張り台から飛び降り、上着をエコーに投げる。
「わきゃっ⁉︎」
「あのバカ何やって……!」
 何やら飛び込むつもりらしく、腕にはめていたアームウォーマーを外しながら船べりに足をかける。
アルフレド今行ったら危ないよ……」
「!」
 見ると、海面がぶくぶくと泡立ちはじめる。
 そしてせきを切ったかのように人魚たちが一斉に飛び出してきた。
「イヤッホー!」「アトラント万歳!」
 ドロテーアとパンチネロも人魚に抱えられて出てきた。
「ぷはあ!」
 人魚たちは歓喜に沸く。
みやこが戻ったぞー!」
 しかしドロテーアはいまいち状況が掴めない。この人達はいったい……。
「あの……どちら様ですか⁉︎」
 助けてくれた戦士に疑問を向ける。
 彼はヘルメットを脱ぎ、凛々しい素顔を見せる。
「我々はアトラントの民……人魚マーマンの鎧戦士の部族。三千年前よりずっとこの日を待ち望んでおりました」
「三千年⁉︎」
「ふふ、我々はあなた方と寿命が違いますので」
「みんな……! 会いたかったよ〜」
 不意にエコーが船べりに立ち、涙を流しはじめる。
「エコー、あなた……姿が」
 透明だった彼女の体が、姿を現しはじめる。長い……タコ足?
 黄色い何本もの足と、ぽっちゃりとした上半身があらわになった。
「わわっ⁉︎ 呪いが解けた⁉︎」
「我らが姫をお助けくださいまして心から感謝します」
「姫⁉︎」
「ええ、竜に呪いをかけられて姿を消されていたんです」

 いにしえの時代、我々は海底のみやこを守る為、竜と契約を結んでおりました。
 竜が海底にとどまり、守護神となる代わりに我々は竜の食糧を納めておりました。
 しかし、あるとき竜が自身の息子夫婦の住まいを造る為、みやこの土地を要求してきました。もちろん我々は丁重にお断りしました。大事なみやこですから。
 すると竜は、姿が消える呪いの実を姫様に食べさせ人質にとったのです。呪いを解いてほしければみやこを明け渡せと言われ、我々は従うしかありませんでした。
 竜は土地を占領すると姫様ごとみやこ海上に持ち上げていきました。もともと呪いを解く気など無かったのです。
 我々は最終的に姫様もみやこも奪われてしまいました。

「でもエコーね、アルフレドと取引してたんだ……! みやこを戻してくれたらSPELLスペルを渡すって。これでやっと皆のところへ戻れるよ」
「ええっ、もしかしてもうお別れ⁉︎」
 はしごを登るドロテーアが驚く。
「元気出して、最後にドロテーアに会えて嬉しかったよ」
 エコーは出会った時のように器用にタコ足を使い、彼女の髪をぐるぐると巻いた。
 そして涙をにじませる彼女の鼻をぶにっと押す。
「あなたの事ずっと忘れないよ」
「私も……私もだよ」
「ああそうだった! アルフレド! 取引通り、私の海流を操るSPELLスペルをあなたに」
 アルフレドの周囲にキラキラが現れ、彼の手元にそれが出現した。
いるか座の羅針盤ネレイド・コンパスアルフレドなら大事にしてくれるよね。ずっと仲良くしてくれたからわかるよ」

 海の上に来ちゃった時はエコー、一人で途方に暮れてた。
 島に流れ着いた人に何度か助けを求めたけど、声だけのエコーのこと怖がってみんな逃げちゃうの。
 だからアルフレドが来た時はなかなか声を掛けられなかった。結局見つかったけど。
「ちょっと! 美味しそうなお菓子でワナを作らないでよー!」
「すげえ、デブの透明人間だ」
「デブって誰の事よ⁉︎ デブって!」
 怖がらずに私の話聞いてくれたのあなたが初めてだった。

「二人で竜を沈める計画立てて毒入り果実作って……すごく時間かかったけど、これでようやく全部、無事に終わったね。今までアルフレドが頑張ったからだよ。これからは好きなところに行けるし、おいしいものいっぱい食べれるね。本当に……本当におめでとう」
 涙をにじませた顔がひとたび微笑むと、彼もまた優しく微笑み、二人の絆が表層に顕われる。
 彼らの長い月日をかけた想いが実を結んだ時、それはまた別れの時でもあった。
「それじゃあ……さようなら」
 エコーと鎧の戦士は船を見送る。
「どうか元気でね。風邪引いちゃだめだよ! ケガにも気をつけて。えっとそれから、ちゃんとゴハン食べてね! いっぱい食べてね! 栄養あるやつ食べるんだよ! えっとそれから……えっと……」
 船は、夕日に染まる赤い空に向かって進む。
 甲板では、鼻水を垂らしたドロテーアが濡れた服を絞りはじめる。
「ふう……ズビッ、そういえばパンチさん大丈夫だった?」
「そういえばって何だコラッ……ズビッ、お前なっズビッ、俺様は別に助けてほしいなんて一言もズビッ」
「あれ……なんであなたまで泣いてるの?」
「うるせーズビッ、俺様泣いてねーしズビッ」
 二人が騒ぐ後ろで、アルフレドには限界が近づいていた。
 先の戦闘で負傷した傷、あるいはあのリンゴを素手で触ったからか──彼はドサっと倒れた。
「⁉︎」
アルフレド……? えっ……ちょっとしっかりして! 血がこんなに……」

 TO BE CONTINUED...

「剣の王国」作品ページ

「剣の王国」は、この綿密に練り上げられたストーリーと謎が解かれて行くさまが本当に気持ち良いのですが、それにも増して、それぞれのキャラクターが「思いの溢れた言葉を紡ぐ瞬間」っていうのがいくつかあるんですが、それらは本当に名シーンが多いです。
読み進めた者だけに訪れるカタルシス。続きをぜひ本編で
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