剣の王国まとめ

comicoで連載中の漫画「剣の王国」のまとめです。作品振り返りにどうぞ。

剣の王国「第10篇 失われた楽園」まとめ

 謎の島、中央部。
 そこには洞窟が存在する。その岩と岩の隙間にできた暗い闇への入り口は、およそ人一人が入れるかどうか。中から聞こえる風の音がどこか禍々しい。

「ここが目的地? 一体なんの穴……?」
 例のごとく質問するのはドロテーア。
「作戦はこうだ。まずあんたがそこに入る」
「入る‼︎?」
「入れるだろ、そのゴボウみたいな体型なら」
 思わぬゴボウ攻撃がドロテーアにクリティカルヒットする。
「俺はやる事があるし、デブじゃ穴の幅が足りない」
「ねえちょっと! デブって誰の事‼︎?」
 オコなエコーにフードを引っ張られる。
「はいはいすみません……」
「エコーだって昔はスリムだったんだから、エコーだって狭いトコ大好きだったんだから〜‼︎」
 このやり取りを聞いてドロテーアは思い至る。
 ──はっ、そっか……! あの四人の中で私を取引相手に選んだのは……「穴に入れる体型だから」! もしちょっとでも私より細くて小さなひとがいたら……! 危なかった! 王の剣カリバーンのお導きに感謝します!
 あの四人というのは無論舟守たちとドロテーアの事で、今頃他の三人はこの島のどこかに吊るされているだろう。南無三。
「……中にはフギンとムニンの子供がいるはずだ」
 気付くとアルフレドは何やらスズランを取り出し、花先にとまる蛍をとんとんとランプの中に落とし、ポワ……っと灯りを灯した。
「あんたはそれを誘拐してくる」
「ユーカイ⁉︎」
「奴隷をやめるのに必要だ。子供と交換でこの印を消させる」
 そう言って首筋の印を見せてくる。
「ちょちょちょっと待って、誘拐なんて私……!」
「エメラルドに行くんだろ、ホラ」
 ランプを渡される。
つるぎは返す、でも戦闘は避けろ、あんたじゃ対処できないから。誰かに見つかっても逃げるか隠れるかしてやり過ごせ。子供を見つけたら紐をたどって戻ってこい」
 入り口の木の枝に巻きつけたグレイプニルの束を渡される。
「……あなたは?」
「残りの連中を捕まえて船を奪う。鶏どもの情報によれば、そいつらはまだ東海岸周辺に居るだろう。船が停泊しているのが北海岸。そこで待ち合わせだ。子供を連れてくる事ができたら船に乗せてやる」
「ねえねえアルフレド、エコーは? 手伝う?」
「手伝う」
 アルフレドは何やらカバンから取り出す。
「難破船で見つけたお宝、なーんだ」
 リボンが巻かれた袋を何回かトス&キャッチしたのち、ポーンと空へ投げると、エコーは犬のように飛びつく。
砂糖菓子ドラジェだあ! 手伝う、手伝う! 取引成立! は〜、アルフレドのせいでまた太っちゃうよ」
 さっそくボリボリ食べはじめる。
「待って! 『海流を操るSPELLスペル』は? どうするの?」
 ドロテーアが荷物を背負ったアルフレドを引き止める。
「それはまた後で、物事にはタイミングってのがあんだよ」
 なんだか得意げな表情を残していった。

 一方、謎の島、東海岸周辺。
 アルフレドの読み通り、船長とゴンザーロは船の調査を終えたのか、森の中を歩いていた。
「『山びこは妖精ニンフの仕業、海びこはアトラントの亡霊の仕業』……ってな」
 相変わらずゴンザーロは船長を止める気でいるらしいが、当の船長はいまいちピンと来ていない様子。
 ゴンザーロは、舟守の部族に伝わる伝承を語りはじめる。

 舟守の部族で、アトラントの伝説を知らない奴はいねえ。
 アトラントの島の黄金都市は……いにしえに栄えたとされる伝説の街だ。島中に幸福の赤い実がなり、この世の楽園と呼ばれた。アトラントに住む部族は、戦士の文化を持つ。彼らは部族の姫を守っており、さらに守護神である巨大な海蛇が島を守っていた。アトラントは陥落かんらくしない城塞都市と知られていたそうだ。
 だがある時、自由を欲した海蛇は、心変わりをしてしまった。海蛇は姫をそそのかし、彼女に毒入りの実を食べさせた。そして海蛇は姫の命と引き換えに、自身の自由を求めて取引を行った。
 姫は一命を取り留めたが──、海蛇は解放され、守護神を失った楽園は海底深くへ沈んだ。
 姫のその後は誰も知らないが、一説によれば彼女はアトラントの亡霊となり、寂しさゆえに今も波間から船を呼ぶという……。

舟守おれたちはアトラントには関わらないようにしてるんだ。命がいくつあっても足りやしない……」
 話を聞き終えた船長は、やはり取り合う様子はなかった。
「やれやれ、舟守の命などとるにたらない。アトラントの発見が先決だ」
 それどころか自分の部族をないがしろにされ、顔を歪めるゴンザーロ。
 船長はおかまいなしに続ける。
「この島の周辺では海流が操られており、漂流物が意図的に集められている。……そう、海流を操るSPELLスペルは、アトラントの部族が継承して来たとされるものだ。この島はアトラントである可能性がある。だがもしこの島がアトラントである場合……、おかしな点が一つ、なぜ沈んだ楽園が海上に戻って来ているのか。ゴンザーロ、アトラントは沈んでいないかもしれんぞ」

 この二人の様子を、木の上から伺う者が──無論、アルフレドとエコーだ。
「右の奴から仕留める」
「オッケー、ちゃっちゃと倒しちゃお!」

 TO BE CONTINUED...