剣の王国まとめ

comicoで掲載されている漫画「剣の王国」のまとめです。作品振り返りにどうぞ。

剣の王国 序篇 まとめ


 むかしむかし
 つるぎの王国と呼ばれたところに
 3人の魔女がいました

 1ばんめの魔女は
 この世で最も美しかったので
 王さまに見初められ
 お妃さまになりました

 2ばんめの魔女は
 この世で最も賢かったので
 万病を鎮める秘薬をつくり
 ひとびとに与えました

 3ばんめの魔女は
 美においても智においても
 2人の魔女にはおよびませんでしたが

 ひとりだけ
 たいそう優秀な弟子をとりました。

***

 息を切らす、森の中を走る、銀色の長い髪の女と、赤い髪の少年。
 女は後ろからついてくる少年の様子を振り返った。彼は今、自分の背丈ほどもある巨木の根を飛び越えたところだ。
「クソッ、あの二人どこに逃げた⁉︎ 1番目の魔女様……いや、女王陛下の命令だぞ、絶対に3番目の魔女を見つけ出し、首をはねろ!」赤い制服の、長い槍を持った兵士たちの一人が、他の二人の兵士に指示を出す。
「もっと速く走りなアルフレド」女は少年に発破をかけた。
「ちょ……待ってジルコニア……」彼はだいぶ体力を消耗している様子。育ち盛りといえど、森の地面は走りやすいとはいえない。不意に地面の雑草に足を取られてしまった。「うわっ……ぶ!」盛大な転倒。
アルフレドジルコニアが足を止める。
「いって……」
 間が悪い事に、兵士たちの影が近づいてきた。アルフレドがこのまま起き上がれば、確実に見つかってしまう。ジルコニアは「チッ」と舌を打ち、低い体勢で地面を滑り降りた。
「(頭下げな!)」彼の頭を押さえつける。勢い余って地面にぶつけてしまったが。
 とかく二人はおし黙る。すぐそこまで兵士たちの足音が迫り、「今変な音がしなかったか?」「いや?」遠のいていった。
 アルフレドは鼻血を垂らした顔を上げ、ジルコニアを睨みつけた。
「(そういう顔やめてよ、ごめんてば)」何やら、首にかけていた白い紐を外す。
アルフレド……、『約束』の事もちろん覚えてるわよね? これ渡しとくわ」
 紐の先についているのはどうやら笛だ。
 動揺するアルフレド。「でもそれは最後の最後にって……うえ」鼻を摘まれ、鼻血と口ごたえを封じられる。
 彼女はアルフレドの首に笛をかけた。「いい? 失くさないでよ」
「よくない! 全然話が違う…………」
 ズズ。
 突如大地が揺れる。
「‼︎」
 アルフレドが揺れの正体に気付く。「SPELLスペルだ」
 異常が起きているのは二人の周囲だけ。何やら緑色の発光とともに、二人の足元を中心に地面が割れ始めたのだ。
「だめ……! アルフレド! ぼさっとしないで逃げな!」
「でもジルコニア……」
 ガラガラと崩れ始める。まるで彼らが立っている地層だけ空洞化してしまったかのように。二人は滑落。
「‼︎」
 ジルコニアはとっさにアルフレドの手を掴んだ。
 ちょうど彼女の真下に、大木が生えている。なぜかその一本だけが、岩肌から垂直に生えているのだ。
 彼女は「くっ」と歯を食いしばり、「う」っと身体を打ち付けた。
 おかげでこの木に引っかかる形で落下は免れたのだけど、
「わ」
 彼女の手の先にいるアルフレドは、宙吊り状態――手を離せば、彼は真っ逆さまに谷底へ落ちてしまう。
ジルコニア
「大丈夫だから……手、離さないで」
 ふとそこへ、どこからともなく鼻歌が聞こえてくる。「フフフンフン♪」
 気付くと木の生え際、岩壁の一部が青く光り出した。
「!」
 その青く光る部分が、まるで扉のように開かれ、中から鼻歌の正体が姿を現わす。
「フフンフン♪」
 サンダルにジーンズ、ツギハギだらけのジャケット。何故だか懐中時計をはべらせ、二人に近づいてくる。
「よう」
 大きなサングラスをかけ、縦巻きにした赤茶色の髪の上には、白いハット帽をかぶっている。
 男は寝そべる女を見下ろした。「見つかっちゃったな、3番目の魔女ジルコニア
「悪いが」彼女の後ろ髪を引っ張る。
「うっ」
「俺はお前らを殺さなきゃならない」ピストルにたまを装填する。
ジルコニアアルフレドが叫んだ。
「女王陛下のご命令だ」
「撃つな‼︎」
 アルフレドの叫び声に、男の手が止まった。
「撃ったら殺してやる!」
 年端も行かない少年の、むき出された闘争心きばはまるで、今すぐにでも男を噛み殺しそうだ。
 男はサングラスの奥から少年を見下ろす。「いいぞ少年」
 ジルコニアは目を閉じ沈黙した。
 男は帽子に手を置く。「かまいやしない」帽子を脱ぎ去ると、その頭部からは、白くて長い、縦に伸びた耳があらわになった。
「俺は『白兎のジョーカー』、覚えたか? 殺しに来い」ニヤリと口角を引き上げる。
 ジルコニアは何だか神妙な面持ちで、自身の弟子に語りかけた。「ごめんアルフレド……」彼女はまるで抵抗する様子がなく、それどころか、この状況を受け入れてほしいとでも言いたげだ。
 男はピストルを構え、言葉を続けた。「……化けてでもな」
「やめろ……」アルフレドが泣き叫ぶ。「やめろよ」
 彼女は構わず言葉を続けた。「約束忘れないで」
 何故彼女は、抵抗しないのか、
 どうしてそんなに、
 寂しさいっぱいに微笑むのか、
「あいしてる」
 そう言葉を残し、アルフレドを手放した。
「ジルコニ」
 彼女は首をはねられた。
「ジル! ジルコニア……ッ嫌だ、嫌だああああああああ‼︎」
 深い深い谷底に、
 落ちていった。

***

 はじまり、はじまり。

 TO BE CONTINUED...

[2018.11.29] 書き直し(省略していた部分を追加)